| Jikando → Archive → Like ping pong |
11 November 2004 |
|
|
|
もくじ 表紙 時間堂について 次回の公演や活動 過去の公演や活動 人々 戯曲集 求人 更新履歴 サイトマップ 問い合わせ |
■Archive / 戯曲集●Scripts of Jikando / 時間堂公演戯曲集「ピンポン、のような」 黒澤世莉女性6人 男性2人 60分 時間堂上演時の情報へ。 登場人物 チヅル 女 三〇歳 小説家。ワシオとハトヤマの恋人。 トキコ 女 二二歳 大学生。スズメ、カモ、ツグミとは同じ大学の友人。 スズメ 女 二二歳 大学生。トキコ、カモ、ツグミとは同じ大学の友人。 カモ 女 二二歳 大学生。トキコ、スズメ、ツグミとは同じ大学の友人。 この地方出身。仲居の親戚。 ツグミ 女 二三歳 大学生。トキコ、スズメ、カモとは同じ大学の友人。ワシオの恋人。 ワシオ 男 二九歳 会社員。チヅルとツグミの恋人。 ハトヤマ 男 二九歳 会社員。チヅルの恋人。 仲居 女 三〇歳 旅館の仲居。この地方出身。カモの親戚。 時代 二〇世紀から二十一世紀にかけてのいつか。 時間 初秋の週末。午後一〇時。 場所 日本。木曽路のはずれにある、とある古びた旅館の新館、地下の娯楽室。外は秋の長雨。 舞台の上には、卓球台が一台、ぽつんと置いてある。卓球台の上には、箱と卓球の道具。卓球台を囲むように、古びたソファーが何脚かある。 開場時、舞台上は暗い。しばらくして、電気がついたように明るくなる。すぐにチヅル入場。ソファーに腰掛け、ビールを飲みながらからあげをぱくついている。ぼんやりとしている。途中でソファーにかかっている布を膝にかける。そのうちに布をすっぽりとかぶってしまう。 仲居、入場。ぐるっと場内を一周して、退場。消灯される。 チヅル、起き上がって、ちょっと困ったそぶり。退場。電気をつけてから、ふたたび入場。またすぐに毛布をかぶってしまう。 開演時間。トキコ、スズメ、カモの声が聞こえる。「えー、まずいよー、ご遠慮くださいって」「平気平気、バレないわよ」などと話しながら、入場。スズメはカメラを持っていて、劇中なにかと写真を撮る。 トキコ お、卓球台 スズメ ていうか、卓球台しかない? カモ 卓球場ね、娯楽室っていうか スズメ 渋いな トキコ なにもないよりだいぶいいよ。ほら、ピンポン カモ えー、めんどうくさい トキコ ヒマでしょうがないじゃない、なんかしよう スズメ だから本、読もうよ トキコ なんでわざわざ旅行中に スズメ 読書ってしたことある? 絵とか描いてない、字が一杯のやつ トキコ あるよ、一応 カモ 持ってきてないもん、本なんか スズメ 三冊あるぞ、江川チヅル カモ だれそれ スズメ 知らないの? トキコ うん スズメ 平積みなってるじゃない、本屋で。本屋さん行ったことある? お店の中本で一杯のところ、服とか売ってないんだけど トキコ バカにするなよ スズメ 直木賞とったんだよ、江川チヅル。知らないって、あんたたちほんとに文学部の学生? トキコ 本ばっか読んでるからスズメ暗いんだよ スズメ 本読むためにするもんだろう、旅行って トキコ もっとハツラツとした卓球をやろう、みんなで カモ じゃあトランプやろうよ トキコ まだやる気? カモ うん、ハツラツと トキコ 飽きた。わたしは激しく飽きた カモ トキコ飽きっぽすぎるよ スズメ 誰だって飽きるわよ、一二時間もダウトやれば カモ 飽きないよ スズメ あなたはね カモ じゃあ大貧民やろう トキコ イや! スズメ そういう問題じゃないよ カモ じゃあ仲居さんもまぜよう トキコ 人数の問題ではない! 私は身体を動かしたいのだ! ほら、道具もある! スズメ 急に元気になったわね カモ トキコ、怖い話苦手なんだね トキコ そんなことない スズメ あ、そう? トキコ むしろ好き、かな スズメ じゃ、言っていい? トキコ 何を スズメ いや、いいや トキコ なんなのよ、ちょっとあんた スズメ あの話、なんかリアルだったよね、仲居さんの カモ けっこう有名、このあたりでは トキコ そうなの? カモ うん、ちいさいころから聞かされてたし スズメ 行ったことある? 出るって言う、その、桔梗が池だっけ カモ ないけど、美人霊は見た トキコ うそ カモ うそ トキコ 成仏させてやろうか、あんたを カモ わたしが美人霊? スズメ 美人じゃないね カモ そんなことないよ、スズメだってカワイイよ スズメ あんたが美人じゃないって言ってるんだけど カモ そんなことないよ トキコ 早く、やるわよ スズメ 子供ね カモ じゃあ、いいよ、ピンポンで スズメ よし、酒もってこよう、酒 トキコ まだ飲むの? スズメ あんたなにしに旅行に来てるのよ。飲むためでしょ カモ じゃあ、トキコ留守番おねがいね トキコ え、ちょっと、わたしも行くよ トキコ、スズメ、カモ退場。チヅル、きわめて迷惑そうに毛布から顔を出し、しばし物思いにふける。そして出て行こうとするが、人の気配になんとなくまた毛布に隠れてしまう。 ツグミ、ワシオの声。恋人同士特有の甘ったるい声を出しながら、入場。 ツグミ 嫌だ、なんか怖い ワシオ 怖くないよ ツグミ うん、怖くないよ、ワシオと一緒なら ワシオ こいつ。お、卓球だ。やる? ツグミ えー、わたし超下手だよ ワシオ いいっていいって ツグミ やだよ、負けるの悔しいもん ワシオ 手加減するから ツグミ ホント? ツグミとワシオ、卓球をはじめる。かなりへたくそ。ツグミ、かなり真剣なそぶりで、へんな掛け声だけを発する。 チヅル ウザイ ワシオ なに? ツグミ え? ワシオ なにか言ったでしょ ツグミ なんにも? ワシオ え? ツグミ なんにも言ってないよ ワシオ うそだあ チヅル ウザイ ワシオ ウザイ? ツグミ ウザイ? ワシオ うん、ウザイって ツグミ わたし、ウザイ? ワシオ ツグミがウザイって ツグミ (卓球を止めて)なにかした? わたし ワシオ 言わなかった? ツグミ なにを ワシオ ウザイって ツグミ 話せないもん、ピンポンしながら ワシオ そうだよね、ごめん チヅル ウザイよ ワシオ ほら、聞こえたでしょ、いまの聞こえたでしょ、誰かがウザイって言ってるの聞こえたでしょ ツグミ 誰かって? 間。 ワシオ 空耳 ツグミ え? ワシオ 空耳だよ ツグミ わたし聞こえたよ ワシオ うそうそ。全部ウソ ツグミ うそ? ワシオ うん、ウソ。聞こえないし言ってないし ツグミ 聞こえたでしょ、アレ ワシオ アレって? ツグミ あの、なんか ワシオ この音だよ(とピンポン球をはずませる) ツグミ えー ワシオ ウザイとか聞こえないでしょ ツグミ いま! ワシオ え? ツグミ 今言ったでしょ、ウザイって、ウザイって言ったでしょ、ってことは聞こえたんでしょウザイって、ねえどうなのどうなのどうなの? ワシオ わかった、悪かった、聞こえてた、ウソじゃなかった、たしかにウザイと聞こえた。落ち着こう ツグミ ウソじゃなかった、ウソつき ワシオ ウソじゃなくて、心配かけたくなかったから ツグミ つまりウソじゃない ワシオ 落ち着いて考えてようか。ここには俺たち二人しかいないのに、声が聞こえるわけないでしょ? じゃ、何か聞こえる方がおかしいじゃない。あんな話聞いたばっかりだし ツグミ 誰かいるんじゃない? ワシオ え? ツグミ この部屋に ワシオ そういう考え方も出来る。でもここには誰もいないよ(とツグミに寄り添う) ツグミ やめてよ、こんなところで ワシオ 誰も見てないよ ツグミ いや、そんな、やめて 暗転。停電したようだ。 ツグミ きゃ! ワシオ 大丈夫、ただの停電だよ ツグミ 怖い ワシオ 俺がついてるよ ツグミ うん、いやだ、やめてよこんなときに ワシオ グッドタイミング ツグミ バカ。もう ワシオ かわいいよ 明転。停電が直ったようだ。卓球台の上にはチヅルののせたからあげ二コがのっかっている。 ツグミ からあげ ワシオ え? ツグミ きゃー! からあげ! ワシオ ど、どうしたの? うわ、からあげ! ツグミ からあげよ! ワシオ からあげだ! ツグミ ヘンだよ、ここ ワシオ 落ち着け、落ち着けばなにも怖くないぞ、きっとここにはからあげが最初からあったんだ、そう考えれば ツグミ からあげの上でピンポンした? ワシオ してない、そのときは隠れていたんだ ツグミ どこに? ワシオ わかった、つまりこれはサービスだ ツグミ え? ワシオ 宿からのサービスからあげだ ツグミ ええー ワシオ 違いますよね。誰かいるんだ、ここに ツグミ じゃあ、見られてた、さっきの ワシオ 見られるの、好き? ツグミ バカ ワシオ 誰か、いるのか? おーい 間。 ワシオ ほら、誰もいないよ。それとも、見られてるほうがいい? ツグミ バカ ツグミとワシオ、ふたたびいちゃつき始める。 トキコ、スズメ、カモの声が聞こえてきて、慌てて卓球台の下に隠れるツグミとワシオ。 トキコ、スズメ、カモ、入場。 カモ からあげ トキコ え? スズメ はぁ? からあげだ カモ 美味しそうだね トキコ 誰か来たのか、ここに スズメ なんでからあげを置いていくのよ カモ テーブルがわりじゃない? トキコ ピンポンしながらか? ほれ、ラケットも置いてある。ボールも スズメ ちょっと、気味悪いわね カモ 食べながら卓球してたんだよ トキコ おかしいだろ カモ ね。マナー悪いよね スズメ そこか? マナーか? 問題点は カモ あと、食べ残しは良くない スズメ 良くないけど。食べ残しは良くないけど トキコ まあいいや。カモ、片付けて。やろうよ スズメ え、ここで? トキコ ほかにどこでやるのよ スズメ なんか、嫌な感じなんだよなあ、ここ トキコ 嫌な感じって? スズメ 誰かいるような気がする トキコ さっきの怪談の続き? 桔梗が池の奥様だっけ スズメ あんた怖いんでしょ トキコ スズメ見慣れてれば、おばけなんて怖くないよ スズメ あんた妖怪ね、じゃあ カモ わたし夢子ちゃんね トキコ あんたはぬりかべ カモ えー トキコ ほら、早くラケット持って。行くわよ スズメ はーい、コーチ、お願いします トキコ ははははは、いっくぞー トキコとスズメ、卓球をはじめる。カモは見ている。 カモ 食べ残しって言えばさあ スズメ うん カモ ツグミってよく残すよね、食べ物 トキコ 残す残す。おかげで私が食べられるんだけど スズメ 貧しいな トキコ うるさい、エコロジーなんだよ スズメ 関係ないから カモ 残すのも良くないけど、食べないのに注文するのやめてほしいよね スズメ そう。さんざん頼んで自分は「もうおなかいっぱいになっちゃったー」とかいって、バカじゃないの? トキコ まあ、おかげで一杯食べられて助かるんだけどね スズメ あんたももうちょっと考えなさいよ、女なんだから トキコ 女である前に生き物だからねー スズメ まあ、ツグミみたいに女女してるのも、ちょっとね カモ カワイイよねー、ツグミ スズメ 男の前ではな トキコ 露骨に態度変わるもんね、あの子 スズメ そうそう、ひどいよねー カモ え、そう? スズメ あんたはいいのよ、気がつかなくて カモ うん、別に普通じゃない、いっつも声高いし、なんかクネっとしてるし トキコ 加速がつくのよ、そのクネ、がグネグネ、になるのよ。はー、女って怖い スズメ あんたも女だろ トキコ そのはずなんだけどねー。お母さん恨みます スズメ うらむ前に努力しろよ トキコ 生まれ変わった方が早いんで スズメ そうね トキコ おい。否定しろよ スズメ がんばりなさいよ、ツグミほどとは言わぬまでも トキコ わたしゃあんなにがんばれないよ スズメ すごいよねー、この前も合コンで ツグミ、卓球台の下から登場。トキコ、スズメ、カモの悲鳴。 ツグミ 座んなさい、あんたちそこに、ちょっと(と卓球台を指差す) スズメ なんで? トキコ ええ、ここですか? ツグミ そう、ここ ツグミ いいから座んなさい 卓球台の上に座るトキコ、スズメ、カモ。 ツグミ あ、ワシオくん出てきていいよ ワシオ、出てくる。 ツグミ ワシオくん、彼氏 ワシオ どうも、ワシオです、はじめまして ツグミ はじめまして、トキコです、ツグミの学校の友達で、あ、このへんも スズメ はい、スズメです、はじめまして、こんばんは カモ カモです、こんにちは ツグミ ワシオくん、ちょっと、なんか、おねがい ワシオ え? ツグミ のど渇いちゃったし ワシオ ああ、なにか スズメ あ、ビールありますよ、ワシオさんビールとか飲みます? ツグミ わたしなんか違うのが飲みたい。ね、ちょっとだけ、お願い ワシオ うん、じゃあ、なにか持ってくるよ ワシオ、退場 ツグミ さて トキコ はい ツグミ どういうこと? スズメ それはこっちが聞きたいわよ。あんたバイトだって言ってたじゃない ツグミ ウソよ。みりゃわかんでしょ カモ うん ツグミ 好き放題言ってくれるじゃない カモ いやあ ツグミ 誉めてないのよ、ここ、誉めてないから カモ はい ツグミ 女が怖いって? あんたたちの方がよっぽどこわいわよ スズメ いや、ツグミさんのほうが ツグミ なに? スズメ 絶対優しいです ツグミ あー、もう、そういうのいいから。これから誤解解くのに協力するように トキコ はい カモ 誤解って? ツグミ ワシオくんが嫌な女だと思っちゃうでしょ、わたしを カモ 誤解? 間。 トキコ あ、よく言っておくよ ツグミ そうして。じゃあこれから、私たちが仲良しだってことを見せつけるわよ。なにボサッとしてるの、早くおりて 卓球台から降りるトキコ、スズメ、カモ。 ツグミ いくわよ、わたし、サイコー。さん、はい。 トキコ、スズメ、カモ わたし、さいこー ツグミ 違うでしょ、さいこうなのは私。あんたたちは、ツグミ、サイコー、でしょ。ほらいくよ、さん、はい トキコ、スズメ、カモ ツグミ、さいこー ツグミ いいわね、わたし、カワイイー トキコ、スズメ、カモ ツグミ、かわいいー ツグミ もっと大きな声で トキコ、スズメ、カモ ツグミ、かわいいー ツグミ いいわね、じゃあ、ビールもっていいわよ、はい、カンパーイ トキコ、スズメ、カモ かんぱーい ワシオ、お酒を持って帰ってくる。 ワシオ 盛り上がってるね ツグミ おかえりなさーい、ごめんねー ワシオ いいよ ツグミ うん、ありがとう ワシオ みんな大学の友達だっけ ツグミ うん。よくいっしょに買い物とか行ったりするの ワシオ みんな若いね ツグミ わたしは? ワシオ 若いよ、もちろん スズメ あれ、どこかで会ったこと? ワシオ え、ごめん、覚えがないけど、あったかな? スズメ あ、ごめんなさい、気のせいです、きっと ワシオ あ、俺もよくやるから、気にしないでよ 間。 スズメ ワシオさんは、なにを? ワシオ 俺は、ただの会社員ですよ トキコ へー カモ 会社楽しいですか ワシオ あんまり、かな トキコ へー 間 スズメ どんなお仕事を? ツグミ ピンポンしましょうよ、みんなで チヅル ウザイなあ、もー トキコ え? ツグミ また ワシオ 聞こえたね カモ 出た トキコ なにが カモ アレ スズメ ちょっと、マジで? ツグミ アレって? カモ ここ、出るのよ、スズキさん トキコ なにか出るの? 奥様の他に? カモ、すたすたとソファーの近くによって、スリッパで床をはたく カモ 逃げられた スズメ スズキさんってなんだよ カモ 言わない? ツグミ 言わない。全然言わない カモ おかしいなあ トキコ あんたがおかしい。帰ろうか スズメ あ、怖い? ツグミ 怖いよねえ カモ 怖くはないけど、別に スズメ あの話、本当かね ツグミ あの話って? ワシオ あれでしょ、美人の幽霊の話 スズメ 知ってます? ツグミ なにそれ? ワシオ うん、前に来たときに、仲居さんから聞いたんだけど、ここ、出るらしいよ スズメ 温泉とか、誰も入っていないはずなのに、人の気配がするんだって。おしろいの匂いがぷーんと ワシオ え! 間。 ワシオ あ、なんでもない ツグミ ちょっと、やめてよ スズメ なに、なに ツグミ 何か見たの? ワシオ 見てない見てない、けど カモ 見てないけど? ワシオ さっき男湯に行ったら、化粧の匂いがしてて、誰か入ってたらまずいと思って、そのまま帰ってきた ツグミ うそ トキコ やだ、ワシオさん、やめてくださいよ、女の人が間違えて入ってただけじゃないですか ワシオ そう思う、俺も カモ ああ、あの人よく入ってるんですよ、桔梗が池の奥様 間。 トキコ いやだ、聞きたくない スズメ 言っていいよ カモ えー、ここからちょっと入った山の中に、桔梗が池っていう池があって。桔梗がいっぱい咲くんだけど、池も桔梗色なのね、あ、青いのよ、つまり。キレイなところでさあ、小さいころよくチョウチョとか取って遊んでたら池にはまってすごい泣いたりした。それいらいプールとかもあんま好きじゃないから、海とか行かないのよね トキコ え? カモ だから、あんまりプールとか好きじゃないの ツグミ 奥様は? カモ ああ、桔梗が池の奥様? スズメ それそれ カモ えーと、なんだっけ? スズメ それ、こっちのセリフよ カモ そう、その池に良く出るのよ、桔梗が池の奥様っていって、キレイな着物を召してて、顔も美人な、幽霊。その人を見ると、たたりがあって、死人が出るんだって 間。 ワシオ よくある話だよね トキコ ですよね 停電。 ツグミ きゃ ワシオ 大丈夫 トキコ ただの停電ですもんね カモ あーそういえば スズメ なに? カモ 暗いと、ほら、アレよね スズメ なによ? カモ 急に暗くなると、残像とか残るよね トキコ 残る残る、超残るよね スズメ ちょっと、どこにいるのよ ツグミ ここ ワシオ うん、ここにいるけど トキコ いま、手握ってるよ、右手は カモ わたし真ん中。たぶん ツグミ 私も ワシオ 俺は右手だけなにも握ってない スズメ 私は両手で握ってるの、誰か。じゃ、いま歩いているの誰? ツグミ 怖い トキコ やめようよ、そういうの 明転。卓球台の上に、チヅルがのせた大福が五コ置かれている。驚くトキコ、スズメ、ツグミ、ワシオ。 カモ いただきます スズメ 食うのかよ ツグミ 気味悪いよ トキコ 帰ろう ワシオ いや ツグミ なに? ワシオ いくらなんでも、大福はないだろう、大福は。幽霊が大福置くか? カモ 置かない ワシオ この部屋に誰かいたずら好きがいるのだ ツグミ わたしじゃないわよ トキコ わたしだって カモ わたし大福もってたら食べます スズメ え、ちょっと、わたしも違うわよ。ていうか意味わかんないんだけど、疑われるの トキコ おかしくない? あんたおびえてないの? スズメ だって、幽霊とかいるわけないし カモ えー、いるよー スズメ あんたねー カモ わたし見たもん、小さいときに トキコ やめやめやめやめ スズメ 人間よ人間、いまいるのは 仲居、入場。 仲居 あれー、みなさまお楽しみですか? カモ こんばんは 仲居 あれー、カモちゃんも ワシオ あ、ごめんなさい、勝手に入っちゃって 仲居 いいんですよ、もともと使ってないだけですから。いやね、さっきのぞいたら電気がつけっぱなしになってたんで、また出たのかと思って ワシオ 出たって? 仲居 前にお話した、アレですよ。でも、みなさんだったんですね、電気をつけたの カモ ついてましたよ、電気 ワシオ 俺たちも、いじってないよ、なにも 仲居 あらー、じゃあ、まあ、アレですかね。さいきんご無沙汰だったんですけどねー ワシオ 脅かさないで下さいよ 仲居 脅しじゃないですよー、カモちゃんに聞いてみればいいですけど、出ますからねー。それがウリですから スズメ どんな旅館ですか 仲居 ねー、でも物好きっていうか、いらっしゃいますからねえ、そういうお話しが好きな方は。それに、桔梗が池の奥様もお艶様も、人に悪さをされるようなことはありませんから スズメ え、この子たたりがどうとかって カモ あれ、うそ トキコ いろんな意味であんたが怖いわよ 仲居 あ、でも トキコ 何かあるんですか? 仲居 あるといえば、たたりというか、女性にだけ、ありますね。ほほほほほほ 仲居、退場 スズメ え、ちょっと ワシオ 仲居さん ツグミ なによ、アレ カモ ああいう人だから スズメ あんたの親戚みんなああなの? カモ えー、わたしが一番かわいいよ トキコ ぬりかべだっつうの、鏡見ろ鏡 ツグミ 女性にだけあるたたりって、なに? カモ さあ? ワシオ 知らないの? 見たことあるんでしょ? 幽霊 カモ 見たことあっても、話とかしたことないし スズメ じゃ、今度あったとき聞いておいて 停電。 仲居、ろうそくを持って入場。おそれおののく一同。 仲居 ロウソクお持ちしました、こうしょっちゅう停電が続くとねえ、大変でしょう ワシオ 脅かさないで下さいよ 仲居 あらー、ごめんなさいね、そんなつもりは トキコ 絶対あったでしょ 仲居 ちょびっとだけね ツグミ 仲居さん、女性にだけのたたりってなんなんです? 仲居 ああ、それはね、未練を残した女性がうちにお泊りなさると、桔梗がお池の奥様に連れて行かれてしまうっていうことよ。では、ごゆっくり 仲居、退場 トキコ 連れて行かれるって、どういう意味かしら スズメ 死ぬんでしょ ツグミ 普通、そうよね ワシオ うん トキコ わたしたちは関係ないわね カモ うん スズメ なんでわたしの顔見るのよ ワシオ 男は平気なんだよね ツグミ 未練あるの? ワシオ ないけれども ツグミ わたしも平気よ トキコ じゃあ、安心? カモ じゃないの ツグミ よし、奥様もおばさんも何でも出て来い チヅル、毛布から出てくる。おどろく一同。チヅルとワシオはお互いに気づいて、顔をあわせないようにする。 チヅル うるさいなあ トキコ きゃー スズメ え? チヅル ちょっと、考え事がしたいんだけど、一人にしてもらえないかな ツグミ ええ? 間。 スズメ 困ります、そんなこといわれても チヅル 私も困ってる トキコ 部屋に帰ったらどうです? スズメ そうですよ ツグミ そうだよ チヅル 雨がうるさくて ツグミ そんな トキコ ちょっと、なんか言ってやりなよ カモ 大福ありがとうございました チヅル どういたしまして カモ どちらさまですか? チヅル 客よ 明転。 カモ 私もです、奇遇ですね スズメ あれ? どこかであったことないですか? チヅル すれ違ったことくらいあるんじゃない、ここで カモ お名前は? チヅル 言わなきゃダメ? カモ ダメです チヅル なんで? カモ おねがいです チヅル そんなお願いある? 間。 チヅル タナカハナコよ トキコ ウソよ、絶対 スズメ 江川チヅルさんじゃないですか? 江川チヅルさんですよね? 小説家の チヅル 違うわよ スズメ いや、江川さんですよ絶対、私、サイン会で会ったことありますよ。ね? チヅル そうだけど スズメ こんなところであえるなんて感激です! ずっとファンです、「ピンポン、のような」大好きです! チヅル ありがと スズメ サインもらっていいですか? あ、もう持ってるんですけど、去年紀伊国屋でもらったやつ、こんどは帯の チヅル 悪いけど、いまはプライベートだから ワシオ 戻ろうか、部屋に ツグミ え? うん スズメ もったいないですよ、せっかく江川さんにあえたんだから トキコ ねー カモ 知ってる人? トキコ 知らない カモ 私も スズメ さっき教えたじゃない、直木賞とった作家だよ トキコ したっけ、そんな話 カモ あれ、J文学? チヅル それ恥ずかしいからやめて、絶対言わないで カモ はい チヅル 悪いんだけど、放っておいてくれないかな ワシオ じゃあ、俺たちはこれで ツグミ またね カモ またねー スズメ え、行っちゃうの? トキコ あ、うん、バイバイ スズメ あ、ペン持ってきて、ペン! 黒くて太いの ツグミ、ワシオ、退場 チヅル 行かないの? スズメ 行きません。あのここにサインしてください、浴衣のここ チヅル 嫌よ スズメ 嫌ですか、肩とかもみますよ チヅル いいわよ スズメ 肩こり症なんですよね、エッセイで読みました。私上手ですよ、肩もむの。おばあちゃんの肩毎日もんでましたから チヅル けっこうよ スズメ じゃ、もみますね チヅル やめてって言ってるの スズメ じゃ、サインと、あと写真とっていいですか チヅル だめ スズメ (カモにカメラを渡して)カモ、お願い。笑ってください チヅル 怒るわよ カモ もう怒ってますよ チヅル もっと怒るわよ スズメ じゃあ、なんかしてほしいことがあったら言ってください、なんでもしますから トキコ え、それは一人にしてあげたらいいんじゃない? チヅル そう、あなた、わかってるじゃない、その通り スズメ それ、あんまり役に立ってる感ないじゃないですか。私はもっと積極的にお役に立ちたいんですよ チヅル それが迷惑なの スズメ 格好いい、そういうハッキリしたところ。ワシオさんて江川さんの彼氏ですよね? 間。 チヅル そうよ スズメ ですよね、雑誌にいっしょに写ってるの見ましたよ チヅル いつ気づいてたの? スズメ 気づきますよ、普通、あんな空気 トキコ 気づいた? カモ 全然 スズメ 鈍いのよ、あんたたちが トキコ カモと同じ扱い? チヅル もう二ヶ月も連絡とってないし、付き合ってるって言わないかもね。新しい彼女もいるみたいじゃない? スズメ ですね。ばれたら面倒なことになりますよね チヅル 何が言いたいわけ? スズメ いやだ、わかってるくせに、そんなこと聞くんですか? チヅル 脅迫っていうのよ、それ スズメ そんな怖いことしませんよ。お願いです、ただの カモ こういう人だったんだね、スズメ トキコ 新しい発見ね チヅル そんなにサインなんか欲しい? スズメ 欲しいですね、それに、新しい原稿も。書いてるんでしょう? ここで。それ以外にこんなところに来る理由、ないですもんね チヅル 断る スズメ そうか、残念だな ツグミとワシオ、マジックをもって帰ってくる。 ツグミ もってきたよ、黒くて太いの スズメ ありがとう。ツグミ、あのね チヅル 卓球しましょう スズメ え? ツグミ なに? チヅル 卓球、するのよ。あなたが勝ったら、サインでもなんでもしてあげるわよ、でも、私が勝ったら、あなたたちここから出て行くのよ スズメ それ、私にメリットないですよね チヅル 私と卓球できるなんて、ちょっとファンクラブで自慢できると思うけど。 スズメ それだけですか? チヅル やるの、やらないの スズメ やる、やります。緊張するなあ ワシオ じゃ、俺たちはそろそろ ツグミ 待ってよ、ちょっと ワシオ そうだね、面白そうだしね、じゃ少しだけ チヅルとスズメ、卓球をはじめる。チヅルが圧倒的に上手。 スズメ 上手いんですね、卓球 チヅル 勝てない勝負はしない主義なの スズメ わたしが卓球部だったらどうしたんですか? チヅル 私のファンに卓球が上手い子なんているわけがない スズメ それ、思い込みですよ ワシオ ああ、そろそろ帰ろうか? ツグミ なんで、卓球やろうよ ワシオ やりたいの? カモ 帰りたそうだよ、ワシオさん ワシオ そんなことないよ トキコ 帰ったほうがいいですよ カモ 面倒なことになりますよ ツグミ 面倒って? チヅル そこ、余計なこといわない ツグミ え、なになに ワシオ ね、なんだろうね チヅル (卓球を止めて)いらいらするなあ。私はあなたのそういうところが嫌いで仕方がないのよ スズメ ええ? ワシオ バカか ツグミ え、知り合い? チヅル 知り合いも知り合い、体の隅々まで良く知ってるわよその男のことなら ワシオ どういう嫌がらせだよ 間。 スズメ あ、格好いいかも トキコ えーと ツグミ え、なに? チヅル あのね、この男といま正式に別れるから、ごめんね、ちょっと、嫌な思いさせて ワシオ お前、そんな勝手なことないだろう ツグミ どういうこと? ワシオ 前の彼女だよ チヅル 前の? いつ別れたの私たち ワシオ 前は前だろ。姿を消したのはお前じゃないか、電話は繋がらないし引っ越すし、なんだよそれ チヅル 連絡取れなかったらイコール別れたことになるわけ? まあいいわ。じゃあ、さよなら、二度とその顔見せないで ツグミ なんなの、この女。ていうか、なに、あんたのその口の聞き方。何様? ていうか、この人の気持ち考えたことあるの? チヅル ああ、もう、済んだから、全部 ツグミ そういうこと言ってるんじゃないでしょ、バカ? あなた チヅル バカじゃないつもりだけど ツグミ じゃわかるわよね、わたしが何を言ってるのか。この人あなたに未練タラタラなんだけど、迷惑なのよ、そういうの チヅル それ、彼の問題でしょ、私は関係ないじゃない ツグミ あなたがいるから悪いのよ チヅル ごめんなさいね、私は私が存在することまで止められないわ。生まれてしまったものは仕方がないし ツグミ ぶつよ チヅル 言ってるうちはぶてないものよ カモ じゃ、こうしましょう ツグミ なに カモ 卓球で決着をつける チヅル アホくさい、やるわけないじゃない チヅル、退場しようとするところを、トキコとスズメが立ちふさがる。 チヅル どいてくれない スズメ サイン。まだもらってないんで チヅル あとで書くわよ トキコ んー、でもなんとなく、ねえ スズメ なんか、うごけないかなーって チヅル ぶつわよ スズメ あ、ぶってほしいかも 間。 スズメ というのは冗談なんですけど トキコ どこまでが スズメ この写真、週刊誌とかに持っていくと、どうなるかなって。ほら、最近大きな話題ないじゃないですか、流行作家の愛憎劇のもつれが田舎のひなびた温泉旅館で、なんて、三文小説っぽくて悪くないかなって。身辺にぎやかになるの、嫌いじゃないですよね? チヅル いい死にかたしないよ スズメ かっこいい『いい死にかたしないよ』、それ「カケヅキ」のハナちゃんとおんなじセリフですよね チヅル あなたやりたいわけ? わたしと、卓球 ツグミ、黙ってラケットを持つ。 チヅル 理解を超えるわね、私の。ネタにもならないわよ。え、これで気が済むの? ツグミ すまないわよ。なにやったってすまないわよ チヅル そうよね ツグミ じゃ、殴った方がいい? チヅル 私が何をしたの? ツグミ ここにいる チヅル どこにいようと私の勝手じゃないの ツグミ 今日ここにいることないじゃない チヅル もう二ヶ月もここに世話になってるところに、あんたたちが来たんじゃないの。まさか、あんたが連れてきたの? ワシオ そういうわけじゃないけど、まあ、そうかな チヅル バカよね、ほんと、そういうところ直した方がいいわよ ツグミが強いサーブをチヅルに向けてはなつ。 ツグミ ありがと スズメ どういたしまして ツグミ やるわよ ツグミ、ワシオとやっていたときよりはるかに上手い卓球。チヅルと互角にわたりあう。カモは審判。 ワシオ ツグミ、卓球、上手いんだね トキコ 知ってた? カモ ううん トキコ みんな、意外な一面があるのね。ていうか、あんたルール知ってるの? カモ わたし、卓球部だったから トキコ わたし、何にも知らない自分が嫌になってきたよ スズメ そう? 仲居登場。 仲居 あらー、みなさん楽しそうで、いいわねえ若い人たちは カモ いくつも変わらないじゃないですか 仲居 あらー、嬉しいわね、そんな。ところで、遠路はるばる、こんな夜更けにお客様ですよ スズメ 誰にですか? ハトヤマ、入場。 ハトヤマ こんばんは。ここ、座ってもいいですか? ワシオ ああ、どうぞ 間。 チヅル ハトヤマ、さん ハトヤマ 久しぶり。あの、雨がひどくて、大変だったよ。けっきょくこの辺の宿だってのはわかってたんだけど、どこだかまではわからないから、無理してこの辺をしらみつぶしに探してみた。来ない方がよかった? チヅル どうして ハトヤマ どうしてって ツグミ ちょっと、まだ勝負ついてないんだけど チヅル いいわよ、あなたの勝ちで ツグミ なにそれ。嫌な女 チヅル 知ってる、あなたもなかなかだと思うけど ツグミ ありがとう ハトヤマ 邪魔だった? ツグミ 帰ってくれます? ハトヤマ 申し訳ない、でも、久しぶりに笑ってる君を見られて、よかった チヅル なんでそういうこと、言うかな ハトヤマ なんで姿を消したの。何か、言ってくれたら良かったのに。言われなきゃわからないし。あ、なんか、すいません、いきなりきて自分のことばっかりで、みなさん、すいません トキコ いえ、全然そんな カモ ある意味最悪のタイミングですよ 仲居 あらー、そんなこと言うものじゃないわよ、カモちゃん。ハトヤマさんはこの雨の中を、必死にここまでいらっしゃったんですから。ぬかるむ山道を滑り滑り カモ そのわりにはさっぱりとしてますね ハトヤマ あ、これですか? いや、ボクはお断りしたんですが、仲居さんが風邪を引くからお風呂をどうぞって、すごく強く勧めてくださるものだから、ついついご好意に甘えてしまって。スーツもグショグショだし、浴衣まで貸してもらっちゃって 仲居 ねえ、お仕事中悪いかなとは思ったんですが ハトヤマ いえ、とんでもないですよ。でも、ビールはまずかったかな。あははは 間。 このテキストは途中までです。最後まで読みたい方はメールを下さい。 こちらから折り返しメールにてWordの添付ファイルを送らせていただきます。 |
|
jikando theatre company 時間堂 Copyright(c) 1997-2004 jikando & seriseri.com All rights reserved. |
〒114-0014 東京都北区田端5-7-1 TEL 070-6442-5972 jikando@seriseri.com 堂主 黒澤世莉 |