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JikandoArchive → Heva some sweets, it is the best way. 11 November 2004
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Archive / 戯曲集

●Scripts of Jikando / 時間堂公演戯曲集

「甘いものを食べる。それが一番よい。」 黒澤世莉
女性2人 男性1人 50分
時間堂上演時の情報へ。

ハジメ 女 22歳 SE。フミエの姉。
フミエ 女 21歳 大学生。休学中。ハジメの妹。
ハルオ 男 21歳 アルバイト、ウェブデザイナー。
ハジメとフミエの幼馴染。

時代 21世紀になってすぐ。
時間 8月。午後。ハジメとフミエの母が亡くなってから数日後。
場所 日本。東京郊外。喫茶店。ハジメの家の近所。

ハジメ、入場。注文し、時間を確認する。
しばらくして、ハルオ、入場。

ハジ ハルちゃん。太ったわね
ハル ご挨拶だなあ。ひさしぶり。元気?
ハジ うん。ハルちゃんは?
ハル まあ、いつも通りかな
ハジ 引きこもってるんだ。なんか、変なかんじ
ハル なにが。変わってないと思うけど
ハジ 三年ぶりなのに、よく知ってるから
ハル そうだね。コーヒーください。
ハジ いつもお世話になっております。納期を守るウェブデザイナーとして社内での評価もうなぎのぼりですよ
ハル おかげさまで北海道の片田舎でもお金がいただけて恐縮です
ハジ 便利な世の中よね
ハル うん
ハジ フミちゃんは? 一緒じゃないの?
ハル うん。すぐ来ると思うよ
ハジ そうか。あいかわらずね
ハル うん。ギリギリまでぐずってた
ハジ わかってるわよそんなこと
ハル うん
ハジ なにか、言った? あれについて
ハル いや。なにも
ハジ そう
ハル でも。たぶん。気づいてると思う
ハジ そうかしら? そんなに勘がはたらくようになった?
ハル だって、わざわざ東京まで呼び出されたら、なにかあるって思うでしょ
ハジ それはそうだ。ごめんね、お守りさせちゃって
ハル かっぽれかっぽれ。暇だし
ハジ バカ、まだ言ってる。かっぽれかっぽれ、って
ハル これハジメちゃんが言いはじめたんだよ
ハジ そうだっけ?
ハル そうだよ。二年生の夏休みのとき。海水浴に行ってさ。ハジメちゃんとフミちゃんが迷子になっちゃってさ。そのときにぼくが見つけてさ。ハジメちゃんが言ってたよ、そのときはじめて
ハジ すごい記憶力
ハル ハジメちゃんが忘れっぽいんだよ
ハジ 言うね、ハルちゃん、ヒッキーのくせに。前向きなのよ、わたしは、いつも
ハル 関係ないよ、それ
ハジ あるのよ。過去を振り返らないの。都合の悪いことはぜんぶ忘れるようにしているの。そのほうが楽しいでしょう?
ハル そうだね
ハジ ハルちゃんは来てくれるの? 式に。ハルパパは?
ハル うん。ハジメちゃんさえよければ、二人で行くよ
ハジ じゃあ、ハルちゃんだけ呼ぼうかな
ハル そうか
ハジ うそよ、二人で来てよ。よかった。うれしい
ハル かっぽれかっぽれ
ハジ まだ言ってる
ハル そんなにおかしいかな
ハジ おかしいよ。他の人にも言うの、それ?
ハル 言うもなにも、他人と接触しないからね。普段は
ハジ そんなことないでしょう
ハル ここ三ヶ月、親父とフミちゃんとコンビニの店員以外に会ってないもん
ハジ 気持悪い。だめよ。それじゃ
ハル そうかな
ハジ そうよ。いっしょに住もうか? こっちで
ハル そうだね。考えておくよ
ハジ フミちゃんとハルちゃんが来たら、私も楽しいし。そうよ、そうしましょうよ、ね
ハル うん。あらためて、おめでとうございます。ご結婚
ハジ ありがとう
ハル もうそういう歳なんだね、ぼくたち
ハジ そうね。東京では早いほうだけど、同級生はけっこう結婚してるでしょう?
ハル そうみたいだね
ハジ ハルちゃんは?
ハル 結婚どころか、彼女もいないからね
ハジ お見合いとかは?
ハル 職業がアルバイトでお見合いする人はいないよ
ハジ 結婚したいとは思う?
ハル そりゃあ思うけど、ずっと先の話だね。ぜんぜんイメージわかないよ。ハジメちゃんの結婚だって、あまり現実味がないもの
ハジ それはそうね。正直な話、私も自分が人妻になるなんて、まったく想像できないもの
ハル それは、まずいでしょう。もうすぐなんだから
ハジ そうはいってもね。なかなか
ハル でも、人妻っていう響きは、そそるものがあるよね
ハジ え、ハルちゃんロリコンなのに?
ハル わかってないな、ハジメちゃん。幼な妻はぼくの一番好きなジャンルだよ
ハジ わたし、幼な妻?
ハル いや、ハジメちゃんがどうこうってわけじゃないんだけど
ハジ それはわたしなぞはもう若くないということ?
ハル まあ、そう
ハジ あなた失礼よ
ハル 幼な妻ですねって言われて嬉しい?
ハジ いやね。でも老け妻なんて言われたくないわよ
ハル 言ってないって
ハジ あれ、言ってない?
ハル ぼくが言いたいことは、ぼくはロリコンだけれども人妻という分野にもやはり魅力はあると言いたいのさ
ハジ 私がセクシーだということね
ハル あー、ええ、まあ
ハジ 困らないでよ
ハル ごめん
ハジ だからわたしに振られたのよ
ハル いいよ。生身の女になんて興味ないもの
ハジ 病気ね
ハル 絶対にぼくのほうがマシだよ。恋愛に振り回されて人生おくってる人より
ハジ それ、わたし?
ハル 一般論さ
ハジ 負け惜しみに聞こえますけどね、ヒッキーさん
ハル 本気だよ。恋愛中心の生活って気持悪いと思わない?
ハジ 童貞が何を言ったって説得力なんかないわ
ハル フミちゃん遅いね。ちょっと見てこようか(席を立つ)
ハジ 座ってなさいよ。そのうち来るわ
ハル 時間ないんでしょ?
ハジ ハルちゃんが見にいったって、フミちゃんが早く来るわけじゃないもの

フミエ、入場

ハジ フミちゃん、ひさしぶり、元気だった?
フミ ちっとも
ハジ 元気じゃないのかよ
フミ おくれてゴメン
ハジ ちっとも変わらないわね、時間にルーズなところ
フミ すみませんね
ハジ 太った?
フミ 三年ぶりに会ってそれかよ
ハジ やっぱり太ったんだ
フミ あなたよりマシよ
ハジ 心配してたのよ、ちゃんと食べてるかどうか
フミ おかげさまで私の食欲は誰にも止められないわ
ハジ そうよね、フミちゃんストレスが過食にいくものね
フミ お姉ちゃんのほうが私の倍は食べるじゃない
ハジ いいのよ、女は少しふくよかな方が魅力的なの。ね?
ハル ぼくはやせてる方が好き
ハジ いやね、照れちゃって
フミ 本音だろ
ハジ フミちゃん自己中ねえ
フミ あんたに言われたくないわよ
ハル 二人とも魅力的だと思いますよ
フミ よけいに傷つくわね
ハジ 素直に喜んだ方がいいわよ
フミ どうせ私は素直じゃありませんよ
ハジ ロリコンに好かれなくたっていいじゃない
フミ どっちだよ
ハル 二人とも魅力的だよ
ハジ もっと心をこめて言いなさい
フミ 強制するなよ
ハル 二人とも魅力的だよ
フミ もういいよ
ハル 二人とも魅力的だよ
ハジ もう一息
ハル 二人とも魅力的だよ
ハジ このへんが限界ね
フミ しつこいって
ハジ ハルちゃん、よくがんばったわ
ハル 誉められてる気はしないね
フミ バカにしてるのよ
ハル そうだったの?
フミ そうまっすぐ聞かれると、答えづらいわね
ハジ まあいいじゃないどっちだって。わざわざ獣道をかきわけて来てくれてありがとうね
フミ じゃあなたは獣道で生まれ育ったってことね
ハジ なにか飲む?
フミ うん。なにか冷たいもの。東京は暑いね
ハジ すいません、アイスティーください。そりゃそうよ、南国だもの
フミ 北海道に比べれば、日本全国南国だものね
ハジ じめじめしてるでしょ、こっちは。ラベンダーはもう終わっちゃった?
フミ まだ咲いてるよ。いい匂い。すこしもってくればよかったね
ハジ そうか。お母さんラベンダー見られた?
フミ ううん、そのころにはもう、なにもわからなくなっちゃってたから
ハジ ラベンダー好きだったのにね。お葬式いけなくってゴメンね
フミ もういいわよ
ハジ 本当に行きたかったんだけど、あの日金八先生の再放送があってさ
フミ ビデオにとっとけよ
ハジ 最終回だったんだもん
フミ 理由になってないわよ
ハジ 生で見たいじゃない?
ハル なるほどな
フミ なるほどじゃないわよ。再放送じゃない。ていうかドラマは生じゃないじゃない
ハジ 本当は仕事がどうしても忙しくってさ、東京を離れられなかったんだ
フミ わかってるわよ
ハジ 一人で大変だったでしょ
フミ 別に。ハルオにもお礼言っておいてよね、ずいぶん助けてもらったから。あと、ハルパパにも
ハジ うん。お金は平気?
フミ ハルパパから少し借りたから、それだけお願い
ハジ わかったわ。心配しないで
フミ してないわ
ハジ ちょっとは心配してよ
フミ それだけ働けばお金くらいあるんでしょ
ハジ まあ、その気になればハワイを買い取れるくらいのお金はあるわね
フミ うそ
ハル うそだよ
ハジ フミちゃん、バカね、あいかわらず。安心しちゃった
フミ 超ムカツクわね、お姉ちゃんは、あいかわらず。後悔しちゃった
ハジ そう?
フミ 来なければよかった
ハル でもディズニーランドに行けるよ
フミ それは、嬉しいけどさ
ハジ いつ行くの?
ハル 決めていないけど、そのうちに
ハジ わたしなんて、あなたたちと一緒に行って以来行っていないわ。せいぜい楽しんでくるがいいわ
ハル 確かに、東京に住んでいるからって、あまり行かないだろうね、そういうところには
フミ あたりまえじゃない。母親の葬式にも顔も出せないんだから
ハジ あいたたたた
ハル やめなよ、フミちゃん
ハジ かわりに結婚式なんてどうかしら
フミ なに、結婚するの、お姉ちゃん
ハジ うん
フミ へー、誰と?
ハジ ミッキーマウス
フミ ふーん。新居はディズニーシー?
ハジ ううん、あのへんは高いから、習志野か船橋のあたりに
ハル リアルだね
フミ よかったね、お金もってるんでしょう、あのねずみ
ハジ それが違うのよ。著作権使用料はぜんぶディズニーが取っ払っちゃうから、彼はランドで踊ったり映画に出たりの出演料しかもらえないの
ハル 意外とつつましいんだね
フミ ねずみだからね
ハジ 彼のことをねずみって言わないでよ
フミ ねずみじゃない。ねずみ男と言うべき?
ハジ ぬりかべのほうがいいわよ
フミ あんなの壁じゃない、ぬらりひょんのほうがイケてるわ
ハジ あんなじじいのどこがいいのよ
ハル 話がずれてるよ
ハジ ありがとう。つまり、結婚するのよ
フミ ねずみ男と?
ハジ 違う。本物の人間と
フミ 本当に? 信じられない。どこまで冗談なの
ハジ バカじゃないのあなた、ミッキーマウスと結婚できるわけないじゃない、それくらいわかりなさいよ
フミ 本当に結婚するんだ。びっくりした。おめでとう
ハジ ありがとう
フミ なんで教えてくれなかったのよ
ハジ 言ったじゃない
フミ いつ
ハジ いま
フミ なんでいまなのよ
ハジ いまいましいって? わたしって面白いわね
ハル 顔を見て話したかったんじゃないのかな
フミ ハルオは知っていたの?
ハル 仕事のメールをやりとりしているときに聞いた。でも、ぼくには顔を見て話したいってこともないだろうし
フミ そう。別にどうでもいいんだけど
ハジ 式は十月に挙げようかと思うんだ
フミ そこまで決まってるの?
ハジ うん。もう予約した
フミ そうなんだ、早いね
ハジ お母さんにも来て欲しかったんだけど
フミ そうか。うん。そうだね。私は行くよ
ハジ あたりまえじゃない
フミ なんでよ、本当は行きたくないけど、新婦側の出席者が誰もいないんじゃ可哀想だから仕方なく行くんだからね
ハジ いいわよ、フミちゃん欠席でも。かわりにハルちゃん連れて行くから。妹だって言って
ハル ええ、ぼくが?
フミ 無理があるわよそれは
ハル やるならがんばるよ
ハジ 本気?
フミ いいわよ、私が行くから
ハル そうか、残念だな
フミ やりたかったの?
ハジ わかった、私がハルちゃんと変わればいいのか
フミ 意味わからないから、それ
ハル じゃぼくとハジメちゃんが結婚すればいい?
ハジ それはないから
ハル そうか
ハジ そんなにがっかりしないでよ
ハル がっかりなどしていないよ
フミ どんな人なの?
ハジ わたしは、明るくて元気な美人ビジネスマン、かな。自分で美人って言い過ぎ? 嫌味?
フミ ていうよりもあんたの自己紹介聞いてるわけじゃないのよ
ハジ 違うの?
フミ あんたのだんなよ
ハジ もっとわかりやすく聞いてよね。ハルオちゃんだってわからないって顔してるわよ
ハル わかったよ、ぼく
ハジ キジマヨシタカさん
フミ 終わり?
ハジ 何が聞きたいのよ
フミ 名前以外に特徴ないの、そのヨシタカさんは
ハジ 失礼ね、人のだんなを捕まえて
フミ 歳は
ハジ 二八歳
フミ 職業
ハジ システムエンジニア
フミ あなたの同僚?
ハジ 取引先で知り合ったの
フミ なるほどね、性格は?
ハジ なんか、取り調べうけてるみたいね。すいませんカツ丼ひとつ
フミ 黙ってなさいよ。すいません、いまのなしです。性格は
ハジ やさしくて、たよりになって、私のことを愛しているのよ。いやだ恥ずかしい
フミ 来るんじゃなかった
ハジ やだ、どうしちゃったの
フミ わざわざ半日かけて東京まで出てきてこんなおのろけ話を聞かされるとは思わなかった
ハジ こら、ひとの幸せを素直に喜べないのは心がゆがんでいる証拠だぞ
フミ わたしゆがんでいますから
ハル ハジメちゃん、もっとまじめに話したほうがいいと思うよ
ハジ わたし十分まじめなつもりなんだけどなあ
フミ 存在自体が冗談みたいなものなのよね
ハジ 喋り方が可愛すぎたっていうことかしら?
フミ キモイよ、お姉ちゃん
ハジ 言ったなあ。じゃ、フミちゃんも東京に来ようか
フミ なに言ってんの?
ハル ハジメちゃん、意味がわからないよ、それじゃ
フミ いいわよね、東京。わたしあそこに住んでみたい。お台場
ハジ 残念だけど、私たちこの近所に住んでるのよね
フミ じゃあ一緒に引っ越そうよ
ハジ 住むには不便よ、あそこは。ディズニーランドに住むようなものよ。スーパーもないし定食屋さんもないし
フミ いやよ、こんなところに住んだら美瑛と大して変わらない もの
ハジ そんなことないわ。新宿まで三〇分で行けるし、下北沢だって近いのよ。知ってる、下北沢
フミ バカにしないでよ、知ってるわよ
ハジ 可愛いお店がいっぱいあるんだから。カフェとかレストランもお洒落なところ多いしねえ。隣の町田だってなかなか悪くないわよ
フミ お姉ちゃん、本気なの?
ハジ 私がいつ冗談を言ったのよ
フミ いや、いっつもだよ
ハジ 百歩譲っていっつも冗談ばっかりだとしても、これは本気
フミ いや。絶対いやよ東京に来るなんて
ハジ どうして?
フミ だって、大学だってあるし
ハジ あなた大学に行ってないんでしょ
フミ ハルオ、あんた余計なことお姉ちゃんに言ったでしょ
ハル ごめん
ハジ ハルちゃんに当たるのはやめなさいよ。あなたのこと心配してくれてるんだから
フミ 心配ね、それはありがたいことで
ハジ そうよ、あなた一人じゃ寂しくて死んじゃうわよ。愛する美人のお姉さまと暮らした方が一〇〇倍幸せになれるわ。わたしも本当だったらヨシタカと二人っきりでラブラブ愛の巣におこもりしたいんだけど、哀れな妹のためには一肌脱がないとね。ヨシタカってば料理も上手いのよ、この間は若鶏のマレンゴ風って言うのつくって、そりゃあほっぺた落っこちて爆発するくらい美味しかったんだから。今日も家でフミちゃんのために腕を振るってるのよ
フミ 食べません
ハジ おなかこわしてるの?
フミ 冗談は顔だけにしてください
ハジ 私の顔が冗談だったらフミちゃんなんてカエルの胃袋よ
フミ 愛の巣のお世話になるほど困っていません
ハジ あら、カエルなだけに、お金はどこから出てるのかわかってないみたいね
フミ お金の話を出すのはずるいよ
ハジ これがリアルな生活なのよね
フミ 大丈夫よ、ハルオもハルパパもいるから
ハジ いつまでもお世話になるわけには行かないでしょう。それともハルちゃんにでも嫁入りする?
フミ そのほうが千倍マシね
ハル ぼく立場ないね
フミ あ、ごめん、つい本音が
ハジ あーあ、ハルちゃん傷ついちゃった。こうなったら北海道を出て一緒に住みましょうね
フミ お母さんが死んだからって、あの家は残すんだからね
ハジ 強情なところも可愛いぞ
フミ そうです。わたしは可愛いです
ハジ フミちゃん、気持はよくわかるわ
フミ わかってない、お姉ちゃん昔から私のことなんかぜんぜんわかってない、だいたいそんな話したいんだったら自分から帰って来ればよかったじゃない、わざわざ私を呼び出すなんて
ハジ 私の素晴らしい世界一の旦那さんに会ってもらいたかったのよ、こっちに来たら一緒に住むことになるんだし。つまりみせびらかしたい?
ハル ヨシタカさんは了解してるの、フミちゃんのこと
ハジ うん。あの人最高の旦那だからね。そういえば少しハルちゃんに似てるかも
ハル かっぽれかっぽれ
フミ かっぽれじゃない。ヨシタカさんと一緒に来たらよかったじゃない、美瑛まで
ハジ わたし母さんの葬式に帰れないくらい忙しいのよ。二人いっぺんになんていつになるかわからないわ
フミ お葬式に来なかったのはお姉ちゃんの気持の問題でしょ
ハジ あれ、バレてた?
フミ そんなこと蒸し返したくないから、もういいんだけどさ。だいたい、今の今まで結婚のこと隠していたのが気に入らないのよ
ハジ バカね、はじめっからフミちゃんに、ああフミちゃん、この日婚約者紹介して東京に来るように説得するから、まあよろしく、って言ったら絶対来なかったでしょ
フミ 絶対来なかったわよ、お姉ちゃんの顔だって見たくないんだもの
ハジ フミちゃん言いすぎだよ。ハジメちゃんだってふざけすぎてるけど、がんばってフミちゃんとお母さんの生活助けてたんだから
フミ それは、感謝してるけど
ハジ いいのよ、ハルちゃん。ありがとうね。でも私もお母さんを看取れなかったことは、けっこうつらかったんだよ
フミ 本当に?
ハジ 疑うかなあ、そこ
フミ それはそうだよね。ごめん。言い過ぎた
ハジ いいのよ、何を言っても言い訳だもの
フミ そんなこと言わないでよ。そんなふうに思ってないから。でもハッキリさせておくけど、これだけは。東京には絶対行かない
ハジ フミちゃんがいやなことは知ってるの。でも来てもらうわ
フミ どうしてよ
ハジ 召使の必要性かな
ハル フミちゃん一人にしておくと心配なんだって
フミ それはないわよ。いままで母さんとわたしを放っておいて、いまさら
ハジ じゃあ、わたしが働かないでどうやって生きていくつもりだったのよ
フミ 北海道でだって働けたじゃない
ハジ システムの仕事なんて美瑛にないわよ。それとも事務でもやって、手取り十万円であなたたちを養えって言うの?
フミ お母さんはお姉ちゃんと一緒に暮らしたかったのよ、ずっと
ハジ わかってるわ
フミ わかってないわよ。お母さん私のことずっとハジメって呼んでたのよ、ハジメごめんね、いつもすまないねって。あんなことしたのに、お母さん悪いお母さんだねって。具合のいいときは、わたしがフミエだってわかってたみたいだけど。普段はずっとハジメ、ハジメ、ハジメ。ご飯のときもトイレのときもお風呂のときも
ハジ それは
ハル フミちゃん、それはハジメちゃんが可哀想だよ
フミ わかってるわよ。でもわたしだって可哀想じゃない。お母さんの面倒を見ていたのはずっとわたしなのに、どうしてハジメって呼ばれなくちゃいけなかったの? 私はフミエよ、ハジメじゃないわ。どうして? どうしてお母さんを許してあげなかったのよ
ハジ フミちゃん、ケーキ食べる?
フミ いらないわよ
ハジ 私は食べるわよ。ハルちゃんはなにがいい?
ハル じゃあ、チーズケーキ
ハジ わたしラズベリーのケーキにするから、ガトーショコラ食べなよ、フミちゃん
フミ いらないって言ってるじゃない
ハジ 心の声は食べたいといっているわよ
フミ じゃあ食べるわよ。チョコでもモンブランでも持ってくればいいでしょ
ハジ すいませーん、チーズケーキとガトーショコラとモンブランとラズベリーケーキ下さい
フミ どうせ甘いもの食べたら機嫌直りますからね、わたし
ハジ あれ、魂胆みえみえ?
ハル わからなかったら残念な子だよ
ハジ フミちゃんも大人になったのね。それならコンクリートジャングル・トーキョーでもサバイバルできるわ
フミ わたしを東京に呼んで、家はどうするつもりなの。住む人がいなくなったら、痛むのが早いわよ
ハジ いいんじゃない、痛んでも
フミ 放っておくわけにはいかないでしょう
ハジ 放っておきはしないわよ
フミ 人に貸すつもり?
ハジ あんなボロイ家、誰も借りないわ
フミ まさか売るわけじゃないでしょう
ハジ そう。そのまさか
フミ バカ。東京に来るのもいやだけど、あの家を売るなんて信じられない
ハジ じゃあ、人に貸す?
フミ それだってダメよ
ハジ だいたい借り手がいないでしょうね。ていうより、わたしあの家キライなのよ
フミ 帰るわ
ハル 待ってよ

フミエ、退場

ハジ いいわ。行かなくても。帰ってくるわよ
ハル でも
ハジ 大丈夫よ。頭冷やして帰ってくるわ。っていうか暑いからのぼせて帰ってくるというべき?
ハル そうか。ハジメちゃん、もっとうまく話したほうがいいよ
ハジ そういう小細工ダメなのよわたし。仕事で疲れちゃってるから
ハル あんな言い方するより、ちゃんと話したほうがいいよ
ハジ ちゃんと話してるじゃない
ハル ちゃんと話すって言うのは、ちゃんと思ってることを伝えることを言うんだよ
ハジ ちゃんと伝えるためにあなたを呼んだんじゃない
ハル まあ、そうなんだろうけど
ハジ 面倒くさいところは、おまかせしました
ハル それはいいんだけど、帰って来るかな
ハジ 大丈夫だって。ケーキ食べてよ
ハル うん。いただきます
ハジ ありがとうね、ハルちゃん。ぶっちゃけて言って、ハルちゃんがいなかったら絶対に話せなかったわよ。そもそも東京にあの子来なかっただろうし
ハル そうかなあ
ハジ お世話になりっぱなしだよね、昔から
ハル 親父のこともあるからね
ハジ それ、ハルちゃんには関係ないじゃない
ハル 息子だからね。関係ないことないし
ハジ 違うわ。それはハルパパとわたしたちの問題よ。ハルちゃんが責任感じることないわ。もっとも、ハルちゃんを利用してるわたしが言えた義理じゃないけど
ハル ははは。フミちゃんにもそういう風に喋れればいいのにね
ハジ わたしたちは、あれでいいのよ
ハル そうだね。ぼくも二人がそろってるのを見られてよかった
ハジ ありがとう
ハル 東京に来られてよかったしね
ハジ そんなわけないじゃない、あなたが東京に来たいなんてことないでしょう
ハル 秋葉原でいろいろ買い物するんだ
ハジ うわー、もっと行くべきところあるんじゃないの、青山とか代官山とか
ハル そういうところに興味がないこと知ってて言うんだもんなあ、人が悪いよ
ハジ 自分でもそう思う。わたし悪い女よね
ハル 自覚してるんだね
ハジ 自覚してなかったらただのバカじゃない。ただのバカだと思っているわけ?
ハル 切れられても困るよ
ハジ いや、バカだっだんだけどさ、昔は。これでも成長したと思うんだけどなあ
ハル うん。変わったよ。うん。変わった
ハジ よくなった?
ハル うん。いい女になった
ハジ オタクに言われても嬉しくないわね
ハル 言うんじゃなかったよ
ハジ ハルちゃんも彼女つくらないと。そうだ、東京で作りなよ。合コンやる、合コン?
ハル 遠距離しろってこと?
ハジ それで東京に出てくればいいじゃない。フミちゃんと一緒に住みなさいよ。ケンカしたときに中に入ってもらったり、夜中コンビニに行ってもらったり、便利だわ
ハル それパシリじゃない
ハジ そういえば、合コンとかってしたことある?
ハル いいよ、チャットでがんばるから
ハジ チャットで彼女つくるってこと? 無理無理
ハル 少なくとも、直接あって話すより話しやすいでしょ
ハジ 痛いなあ。痛いほどひきこもりよね。ハルパパはそれでなにも言わないの?
ハル 別に、仕事さえしていれば何も言わないね
ハジ ハルパパにしてハルオあり、って感じよね。ハルパパは家のこと、なんだって?
ハル うん、フラワーランドの職員の人が家を欲しがっているみたいだから、その人なんかどうかって
ハジ ほんとうに、ハルオとハルパパにはお世話になりっぱなしね
ハル それ、皮肉?
ハジ 半分はね

フミエ、入場

ハジ おかえり
フミ 外暑くって、のど渇いちゃった。すみません、お水下さい。ごめん。大人気なかった
ハジ いいのよ。帰ってきてくれてありがとうね
フミ わたしも、お姉ちゃんの気持わかってるつもりだった。お葬式に来ないのも、わたしは許せないけど、お姉ちゃんの気持はわかるよ。借金を返さないといけないことだってわかってるし、病院にだってお金を払わないといけないし、私の大学のお金もどうにかしないといけないことはわかってるわ。でも、できればあの家に住んでいたいし、あの家を手放すなんて、つらい
ハジ そうよね
フミ お姉ちゃん、なんでお葬式に帰ってこなかったの? お姉ちゃんが来てくれれば、もっといろんなことを話せたのに。お姉ちゃんはお母さんの子供なんだから、お母さんだってお姉ちゃんに来て欲しかったと思うよ
ハジ あなたもお母さんの子じゃない
フミ お母さんにとってはお姉ちゃんが本当の子供なんだよ。そんなにあの家が嫌いなの? お母さんが許せないの?
ハジ もうお母さんが嫌いだなんて思ってない。でもあの家に帰るのはつらいわね。できればもう二度と見たくもないわ
フミ そうか。お母さん、いっつも、ハジメ、ごめんねって。弱いお母さんでごめんねって。せめて最後に許してあげて欲しかった
ハル ぼく、席はずそうか
ハジ いいわよ、いてもらって
フミ はずしたかったらはずしてもいいけど
ハル どうしよう
ハジ もうどうだっていいのよ、お母さんのことは
フミ お姉ちゃん、本当にわたしと暮らしたいの?
ハジ いやなのよ、本当は。でも仕方がないじゃない? あなた一人で生きていけるわけもないんだから
フミ 働いて、自立するわよ
ハジ 簡単に言うのね
フミ 簡単じゃないことくらいわかってるわよ
ハジ フミちゃんなんで大学に行ったのよ。医学部に行きたいって聞かなかったのはあなたでしょう?
フミ 勉強はしたいわよ。でも家が売られちゃうよりはマシでしょ
ハジ わたしが汗水たらして払ったお金は無駄になるってことか
フミ 奨学金もらってるわ
ハジ 大学にいけて餓死しましたじゃギャグにもならないでしょ
フミ そりゃ、お姉ちゃんのおかげで大学にいけたのは感謝してるけど
ハジ でしょ? こんないいお姉ちゃんいないわよこの銀河系には。だいたい、旭川は遠すぎたのよ。東京の医学部に行けば、通学も楽だしね。転学できるわよね?
フミ お姉ちゃん、わたしのことなんにもわかってないよ
ハジ バカね、あなたのことなんて右頬から左耳くらいまでお見通しよ
ハル それあんまり見通せてないよ
フミ 本当のわたしのこと知っても、一緒に住みたいって言ってくれる?
ハジ もったいぶるほどの裏面があるの、あなたに
フミ あったらどうするの
ハジ まず聞かせてよ。それから考えるわ
フミ ハルパパと寝たのはお母さんだけじゃないのよ。私も。お姉ちゃんが入院している間、何度も何度も何度も何度も

ハジメ、フミエをひっぱたく。

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